人手不足なのに転職エージェントが相次ぎ倒産する背景。

こんにちわ。北見尚之です。

転職経験者であれば人材紹介会社を一度は利用したことことがある人も多いと思います。
人手不足の今、企業と転職希望者との橋渡しをする存在としてより身近なものになっています。

しかし2023年は、2000年以降で最多の16件の倒産が発生し、コロナ禍前の19年の4倍と急増しているそうです。
人材紹介業の市場は2022年に3000億円を超え、年間18%以上の著しい成長を見せていて、
人手不足に加え、市場規模も拡大しているにもかかわらず、
なぜ倒産する人材紹介会社が出てくるのか。

そもそも「人材紹介会社」とは、転職エージェントと呼ばれることが多く、
人材紹介会社の正式名称は「有料職業紹介事業者」と言います。

求職者と企業などの求人事業者との仲介を行い、
就職が決まった際に手数料を受け取ることにより収益を得ています。
実はその歴史は意外と古く、江戸時代には人材紹介会社の原型があったといわれています。

人材紹介会社は許可制で、事前に管轄の労働局の窓口へ書類を提出し、
要件を満たしていると厚生労働省が判断した事業者のみが営業できます。
労働法の一つである職業安定法により活動内容が定められており、
建設や港湾事業者への人材紹介は禁止されています。

大手企業であれば求職者の方から問い合わせがあるかもしれないが、
特に中小企業に関しては、今までのようにハローワークや転職サイトに
求人票を掲載しても応募すらないというところもあります。
ハローワークへの掲載は無料ですが、転職サイトに求人を掲載するには費用が発生します。
どうせお金を払うのなら、確実に人を紹介してくれる紹介会社を利用しよう考える企業も増えています。

転職希望者にとっても、紹介会社は不可欠な存在となっていて、
従来は、ハローワークや求人誌、求人サイトなど求人情報は特定の媒体にクローズドに公開されていました。
しかし現在は、SNSや各社のサービスなどを通して手軽に、これまでと比べ物にならないほど多くの情報を入手できます。

人材紹介というビジネスの規模はさまざまですが、フリーランスから数千人を超える上場会社まで、
そのビジネスモデルはほぼ共通しており、実は至ってシンプルです。
紹介した求職者の入社が決まれば、紹介先企業から紹介手数料を受け取りこの紹介手数料が収益の中心となります。

一般的に紹介手数料は、入社が決まった求職者の初年度年収の30%前後といわれています。
年収500万円の人が入社したら、紹介会社は紹介先企業から150万円を受け取れます。

しかし、市場価値の高いスキルや技術を持っている求職者の紹介手数料は割合が高くなる傾向にあり、
ITエンジニアやAI技術者といった希少性の高い職種の転職では手数料100%ということもあります。
転職時の年収が1000万円だとしたら、そのまま1000万円が人材紹介会社に支払われるということになり、
AIや医療などの専門スキルを持っている転職希望者を抱えている会社のほうが収益性は良くなります。

一方で、短期の非正規雇用者の紹介に特化した会社もあります。
こうした仕事は「日々紹介」と呼ばれ、労働者に支払われる日給に対して何%といった手数料を受け取る仕組みとなっています。
手数料の割合は、正社員と比べて低いですが、スキルを求められないケースも多いので人数をそろえて対応するモデルとなっています。

また人材紹介会社は、派遣会社とその事業内容を混同されることがありますが、実態は異なります。
人材紹介会社は人を探している企業に求職者を紹介するまでにとどまります。
日々紹介といわれる案件でも、紹介した先の会社がアルバイト社員として雇用します。

それに対して、派遣会社は自社で雇用している人を企業に派遣します。
収益の柱は、派遣した会社に請求する料金と派遣社員に支払う給料の差額、すなわちマージン料によるものです。

一昔前は、マージン料によりボロ儲けしているというイメージがある派遣会社ですが、
昨今では派遣社員への社会保険料の企業負担分が増加しているため、
利益率は年々減少しており、営業利益率は5.9%前後ともいわれており、他の業界と比べて決して高いとはいえません。

人材紹介会社は、求人企業と求職者のマッチングのみですので社会保険料の負担は発生しません。
経費も紹介会社の社員の給与とその活動費くらいしか発生しないため、利益率が高いビジネスモデルといえます。
こうした状況を踏まえてか、職業紹介会社の新規参入は増え続けました。

しかし、参入業者が増えれば、当然競争は激化し、頭数をそろえるのが最低条件である派遣と異なり、
人材紹介会社は企業が求める高度なスキルを持った即戦力人材を集める必要があります。
人手不足とはいえ、要求するスキルが満たされなければ採用は見送られてしまいます。
ビジネスモデルがシンプルがゆえに、求職者の転職が決まらなければ売り上げはゼロになってしまいます。
売り上げがなければ、経営が成り立たなくなり倒産してしまいます。

こうした状況下だからこそ求職者は、どんな人材紹会社と選び転職活動を共にするかの選択が重要になってきます。
ただ、大手だから安心とかではなく、担当者が自分にマッチするかも一つの判断材料になると思います。

むやみに転職を急がせるたり、給与など転職先の良い面だけを強調する担当者だと、
転職してもイメージと異なる仕事内容や社風に満足できず、
再び転職活動するという無駄な時間と労力がかかる可能性がありますので、
焦らずに冷静に判断しながら人材紹介会社や担当者の見極めも必要になってくると思います。

北見尚之

ボトル緑茶の同質化が進む中。。。

こんにちわ。北見尚之です。

大手飲料メーカーが、「ボトル緑茶」を巡ってシェア争いを激化させているようです。

「緑茶は安いもので良い」という消費者も多く、
大手メーカーが企画や製造を手掛けるナショナルブランドよりも、
小売各社が独自に企画する低価格なプライベートブランドが拡大傾向にあります。
スタンダードな緑茶では差別化が難しくなっており、大手各社は容器や味わい、
パッケージなどの刷新を相次ぎ発表し、顧客獲得につなげる狙いです。

その中で、キリンビバレッジは「生茶」ブランドを大幅に刷新すると発表ています。
容器、味わい、パッケージのすべてをリニューアルし、最大の特徴は、
同社の定番商品としては初めてとなる「白ベース」のパッケージに変更しました。
これまでの濃い緑のデザインや、パッケージ全面に商品名を押し出すことをやめ、
日常生活になじむデザインを目指したとのこと。

開発の背景には、同社の調査で明らかになった現在のデザインでは緑茶感が強すぎるや、
持って歩く際に恥ずかしいという声を受け、緑茶の概念を覆すような、
白を基調とした新しいデザインで差別化を図るとのこと。
思わず手に取って持ち歩きたくなるような現代的なデザインで、
容器もシンプルな洗練された形状に。
味わいも既存の製法に加え、茶葉を凍結、
凝縮することで新茶のような甘さを引き出す独自の製法を採用したとのこと。

次に、サントリーは、今年20周年を迎える「伊右衛門」の味わい、
パッケージを大きく刷新すると発表しました。
同社によると、令和5年の清涼飲料出荷実績は前年比102%と過去最高を記録した一方で、
伊右衛門」の販売数量は、平成16年の発売以来、過去最低になり、
刷新する「伊右衛門」ではこれまでの最高レベルの「濃さ」で勝負する。
コクを引き出す旨み抹茶を3倍に増加させ、コクと香りを引き立てた奥深い味わいにし、
パッケージは、こだわりの「濃さ」を表現する濃い緑を基調としています。

一方、アサヒ飲料は、香りと甘みが好評な「颯」のパッケージを、
良さがより伝わるデザインに刷新する。新製品では、
緑茶を思わせる緑色を強調するために背景を白色ベースに変更し
、特徴である「微発酵茶葉使用」の文字を従来より大きく明記している。
販売2年目となる今年は、味わいはそのままに、
香り高い緑茶を強調したパッケージでシェア拡大を狙うとのこと。

「ボトル緑茶」市場は、容量や価格重視の傾向が強まるなど同質化が進んでいます。
そのため、各社が緑茶に新しさを加えることで市場を活性化すようとする、
工夫がこれからもっと必要になってきそうですね。

北見尚之

コンビニは変革期を迎えるのか?!

こんにちわ。北見尚之です。

日本のコンビニエンスストア業界が、新たな変革の期を迎えるかもしれません。
その理由が、業績好調のローソンが通信大手KDDIによる株式公開買い付けの対象となったことです。

この株式買い付けにより、KDDI三菱商事はローソンの株式を共同で保有することになり、
結果として三菱商事KDDIがそれぞれ約50%ずつの出資比率となる予定です。
KDDIが株式取得のために用意する金額はおよそ5000億円とされています。

ローソンの業績はアフターコロナにおける復調は目覚ましいものがあり、
2023年2月期には国内コンビニ事業が特に好調でした。
売上高は前期比41.6%増の9886億円で最終益は前年比37.9%増の246億円と大幅な増収増益となりました。

そして24年2月期第3四半期の累計でも、前年同期比48.8%増の458億円に拡大し既に前年の最終益を上回っています。
今期の通期における連結業績予想では、ローソンの売上高は史上初の1兆円超えも射程圏に入っており、
最終益も23年の倍となる500億円を見込む好調ぶりです。

KDDIによるローソンの株式買い付けは、単純な投資という側面だけでなく、
自社の販路や既存ビジネスとのシナジーを掛け合わせた戦略もあるようです。

従来のコンビニ業界は、小売から派生した宅配サービスや印刷、
銀行ATMといった分野で日常生活のカバー率を拡大してきました。
近年では、モバイルバッテリーやライドシェアサービスなどにも積極的で、
都市におけるコンビニの役割は年々広くなってきています。

将来的には、KDDIスマホ窓口を設置するほか、
auショップでのローソン商品を取り扱うなどの既存ビジネスにおけるシナジーを見込むほか、
「クイックコマース」と呼ばれるネット経由での注文を近隣店舗から迅速に届ける新業態にも参入する方針だそうです。

クイックコマースは、22年に業界の先鋒だった「QuickGet」の運営スタートアップ企業が破産するといったトラブルもあったが、
潤沢な販路と資金力、そしてアプリ上のユーザーベースを誇るKDDIとローソンの組み合わせは、
クイックコマースの文化を根付かせるのではと期待されています。

今回の統合が成功するカギは、KDDIの通信技術やデータ分析能力と、
ローソンの物流・小売業界での豊富な経験とネットワークが、
相互に補完し合う形で活用されることでしょう。

近年ではXやLINEなどのアプリで日常生活が完結するといった「スーパーアプリ」構想が話題となっているが、
KDDI三菱商事によって、ローソンは「スーパーコンビニ」を目指しているのかもしれません。

ところでKDDIは、なぜローソンの株式を購入しようとしたのでしょうか。
記者会見によれば、ローソン株主の三菱商事側が、自社だけでローソンの企業価値を高められるか悩んでいたことがきっかけであるという。

上場コンビニ企業を見渡すと、業界2位のファミリーマートがユニーと統合したのち、
20年に伊藤忠の株式買い付けを受けて上場廃止するといった統廃合の動きもありました。
とすると、KDDIが仮に全国的なコンビニチェーンと組むとした場合、
独立資本系のセブン・アンド・アイHDを除けばイオン系の「ミニストップ」か「ポプラ」ということになるはずが、
ミニストップ時価総額は469億円とローソンの規模と比較して5%ほどしかなく、
ポプラの時価総額も38億と小粒であり、そもそもポプラの外部筆頭株主はローソンです。
ローソンを手に入れればポプラのガバナンスにも参画できる状態になります。

このような背景を踏まえると、国内コンビニチェーンの中でKDDIと実効的に組めるのは、
以前からも協力関係にあったローソン以外になかったといっても過言ではないかもしれません。

日本国内のコンビニ市場の成熟度を考えると、成長の鍵は地域社会への浸透と海外展開にあるでしょう。
競争の激しいコンビニ業界において今回の株式買い付けでKDDIの強みが発揮され、
業界に新たな変革の期の渦を巻き起こせるか注目したいところですね。

北見尚之

24卒就活生の半数以上が「内定後」に辞退。

こんにちわ。北見尚之です。

少子化をはじめとする若い労働力の減少により、新卒採用は売り手市場となっているのは皆さんもご存じのことでしょう。
今や新卒採用は「企業が学生を選ぶ」ではなく、「学生が企業を選ぶ」ものへと変化しました。
複数の企業から内定をもらう学生も珍しくなく、必然的に内定辞退が増加していくことになります。

採用サービスを運営する事業者の2024年卒の学生を対象に実施した調査から各選考フェーズでの辞退率とその理由が見えてきました。
「説明会後」に選考を辞退したことがある人は7割強、「1次選考後」は4割強、「最終選考後」は約3割、
「内定後」の辞退に至っては半数を超える55.8%となりました。

まず、「企業の説明会後」に選考を辞退したことがある就活生の辞退理由で、
特に多かったのは「自分に合う企業ではなかった」でした。
回答者からは「思っていたイメージと実態が異なっていた」「自分には合わないと思った」などの声があり、
説明会の段階で企業とのフィット感を判断する人が多いことが読み取れます。

次に、「1次選考後」に辞退したことがあるの人に理由の、約半数が「自分が働くイメージができなかった」と回答しました。
以降は、「とりあえずエントリーしただけ」、「他の予定と選考の日程が被った」、「他の企業の練習だった」と続きました。
回答した就活生からは「同業他社と比較して」「より志望度の高い企業の選考が進んでいたため」
「社長さんの雰囲気が、自分に合わないと感じた」などの声もありました。

「最終選考後」に辞退した経験のある人の、理由として「志望度の高い企業から内定をもらった」が最も多く7割を超えました。
この段階になると「会社の雰囲気がマッチしていなかった」、「自分には合わないと感じた」などの
会社とのミスマッチの意見は減少しています。

そして、「志望企業の内定後」に内定を辞退した経験がある人の、辞退した理由トップは「本命企業ではなかった」でした。
次いで2位は「福利厚生が他社の方がよかった」で、3位「希望している勤務地でなかった」、
4位「キャリアアップのイメージができなかった」と続きました。

一方で、内定承諾した企業を選んだ理由の、最多は「自分がやりたい仕事ができる」で5割弱でした。
その他では、「社員・社風が良い」、「給料が良い」、「自分の望む働き方ができる」などの理由が挙げられました。

内定が受諾され、新卒で採用となってもいまどきのZ世代の思想や、
今の若者はヌルいや、出世意欲がないなどの問題が控えているので、採用担当者や教育担当者は本当に大変そうですよね。

北見尚之

定食チェーンの今後のカギは「男性客」?!

こんにちわ。北見尚之です。

数ある外食チェーンの中で、定食チェーンといえば「大戸屋」と「やよい軒」が浮かぶ人も多いでしょう。

両チェーンとも定食メニューをベースとしており、店舗形態も似たような印象がありますが、
出店地域やFC比率など、意外な違いがあります。
大戸屋は、経営難に陥りコロワイド傘下に入り持ち直しつつあり攻勢をかけようとしています。
対するやよい軒も新たな方針を模索中で方針の違いは今後の命運を分けるかもしれません。

22年度末における国内店舗数は大戸屋が311店舗、やよい軒が364店舗です。
両チェーンとも定食メニューをメインとしており、おかずにご飯と汁物、小鉢類という構成は同じです。
一方、やよい軒がセントラルキッチン方式を導入しているのに対し、大戸屋は店内調理を基本としています。
そのため、料理の手作り感では大戸屋が一歩リードしており、
定食メニューの主な価格帯はやよい軒の750~1100円に対し、大戸屋は900~1200円と後者の方が150円前後高めです。

価格が高めの分、手作り感のある料理を楽しめるのが大戸屋だが、多く食べたい人や男性客はやよい軒を好むかもしれません。
何といってもやよい軒の特徴はご飯のおかわりが自由である点で、量を求めてやよい軒を選ぶ人も多いことでしょう。
だしや漬物のサービスもあるため、だし茶漬けによる味変も可能ですが、
対する大戸屋には、ご飯のおかわりサービスが基本的になく追加料金を支払う必要があります。

出店地域では、国内で約300店舗を展開する大戸屋だが、そのうち約190店舗が関東にあります。
次いで東海地域に27店舗を展開し、関西などその他の地域は数店舗から十数店舗しかありません。
一方で、国内に約360店舗を展開するやよい軒は、現状東京が56店舗、
大阪49店舗、福岡34店舗と全国的に展開しており隣接する県にも十数店舗を出店しています。

この点からすると、全国的な知名度でいえばやよい軒の方が高いかもしれません。
これは池袋をルーツとする大戸屋と、九州地盤のやよい軒の違いが現れた形といえるかもしれません。
ちなみにFC比率を比較すると、大戸屋が50%弱に対しやよい軒は約25%です。

大戸屋といえば経営難になった印象も強く、19年3月期・20年3月期と相次ぐ値上げで実際に客足が遠のき、
21年3月期には債務超過にも陥り、そこを飲食大手のコロワイドが買収し20年からグループの傘下としてさまざまな施策を行っています。
特に30~40代男性からなる「離脱者層」の呼び戻しを急務としており、
これまで大戸屋は女性がターゲットの定食を強みとしていたが、ハンバーグやプルコギなど男性向けのメニューを随時投入しています。

対するやよい軒は、運営会社が非上場化したため情報は少ないものの、プレスリリースなどから追っていくと、
大戸屋と同じく男性向けメニューの充実化を進めているようです。
肉や唐揚げに関するキャンペーンが多く、12月から提供している「野菜とラムのジンギスカン定食」も、
メニュー名に「野菜」とありつつ肉がメインで、やよい軒は今後公共施設への展開を強化するかもしれません。

両チェーンともコロナ禍でテレワークの導入や消費者の外出自粛といった打撃を受けているが、
その後、両者とも業績は回復しつつあり、コロワイド傘下に入った大戸屋は、
「男性向けメニューの充実化」「新業態店の展開」「飲食事業以外への進出」の3方針で巻き返しを図っています。

対するやよい軒も男性向けメニューの充実化という点では共通し、
外食チェーンでは、過去に女性向けメニューを強化しようとして利益が圧迫されてしまった経緯もあります。
そのため、リーズナブルな商品を売りにする外食チェーンにとって男性向けの強化は避けられない戦略と考えられます。

また、出店戦略では大戸屋が商業施設を狙っているのに対し、やよい軒は初の病院内出店を決めました。
双方ともに、ポテンシャルは未知数だが病院内店舗が成功すれば公共機関への出店を強化するでしょう。

両者とも「男性向けメニューの充実化」という共通点はあるものの、
出店戦略に違いが現れることになりましたが、今後この戦略が両社の明暗を分けることになるかもしれませんね。

北見尚之

スマホで撮れるのに、なぜ「チェキ」は人気なのか?!

こんにちは。北見尚之です。

まもなく発売25周年を迎える「チェキ」ことINSTAX(インスタックス)ですが、撮影したその場で写真がプリントされるインスタント機能が特徴的です。
現在のラインアップには、「アナログカメラ」のみならず、プリント機能とデジタルデータの保存を兼ね備える「ハイブリッドカメラ」に、
スマートフォンで撮影した写真をフレーム付きでプリントできる「スマートフォンプリンター」もあります。

現在、100カ国以上で販売されているチェキですが、若年層を中心にグローバルで支持を得ています。
売り上げ比率は約9割が海外で、残りの約1割が国内となり、カメラ付き携帯電話やデジカメの普及により一時は売り上げが低迷するも、
2012年にブームが再来し、2022年には過去最高の売上高を記録しました。

チェキは、1998年から発売され、誕生の背景には「写ルンです」と「プリクラ」の存在があるとのこと。
1986年に発売された、「写ルンです」は簡単に操作できるシンプルなインスタントカメラで持ち歩きやすい軽さもあり、
1990年代に爆発的にヒットし、そして同時期にブームとなった「プリクラ」はその場でイベント的に楽しめる、
“即時エンタメ”の要素がウケてヒットにつながりました。

この2つの特徴を掛け合わせ、簡単・シンプル・ポータブル・即時エンタメの要素を持つ製品としてチェキが誕生しました。
すると、狙いどおり若年層の女性を中心に大ヒットし、2000年ごろに最初のブームが到来し5年目で販売台数100万台を達成しました。
しかし、1999年に登場したカメラ付き携帯と2000年代から普及し始めたデジタルカメラの影響により、
需要が下がり始め、2000年代のチェキの売り上げは下降し、ブームの後に低迷期が訪れます。

そこから売り上げが再度上昇したのは、2007年を過ぎたころで、2007年に放映された韓国の恋愛ドラマにチェキが登場し、
若年層女性の間で話題になり、それがきっかけで売り上げが上昇したようです。
当時の若年層はチェキを知らない世代で、ドラマを見て「何これ?」という反応になりスマホ撮影があたり前の世代からすると、
それとは異なる写真のエンタメのツールとしてチェキが面白いと感じたようです。

この出来事を機に、韓国を中心にグローバルでチェキの人気が再加熱し始め、この流れを汲んでチェキはアプローチを方向転換しました。
それ以前は、インスタント技術を備えたカメラとして技術面を押し出していたが、丸みを帯びた本体にパステルカラーを施し、
世界で一番カワイイ、インスタントカメラとして2012年に売り出し、チェキブームが再来しました。

スマホで撮影して画面で見ることが標準になった昨今に、なぜあえてチェキで撮影するのか。
そこにはチェキ独自の世界観がある、チェキの写真は「粒子っぽい」「独特の質感がある」など、こういった世界観が好まれているようです。
さらに、プリントすると写真データが記録から作品のようになり、「宝物になる」「もっと身近に感じられる」といった声もあるようです。

その後、チェキはラインアップを拡充し、2014年にはスマホで撮影した写真をチェキのフィルムでプリントできるスマートフォンプリンターを発売。
2017年にはデジタルデータを本体に保存して、プリント前に画像編集・加工ができるアナログとデジタルのハイブリッド機種を発売しました。

かわいいデザインばかりでなく、幅広い層が好むようなスタイリッシュなデザインの機種もそろえ、その結果、ユーザーは女性のミドル・シニア層だけでなく、
男性にも広がり、グローバルで高い支持を得たのがハイブリッドカメラです。

一方で、既存のチェキの愛用者などからは「チェキはアナログだからいい」とう意見もある中で、新製品として発売した「インスタックス パル」は賛否両論を呼んでます。
理由は、同製品は撮影に特化しており、印刷機能を持たないことです。
機能も最小限に抑えられ、撮影した写真はスマホアプリに自動転送、あるいは本体に保存され、プリントする際は別売りのスマホプリンターを購入する必要があります。

なぜ、最大の特徴である「インスタント機能」をなくし、機能を抑えて小型化したのか。
1つ目は、写真撮影のおもしろさを広げたいという発想からで、何枚か撮影した後にスマホで見ることになり、
この時間差によって「写ルンです」のようなワクワク感が味わえることだそうです。
2つ目は、ポータブル性を高めるためで、これまでは本体にフィルムを備えており、
それ以下のサイズにできなかったが、印刷機能を切り離したことで手のひらサイズを実現しました。

消費者インタビューで「チェキを買わない理由」の圧倒的1位が「大きい」で、フィルムを取り除き小型化を追求し、
結果的には、「インスタックス パル」は各所から注目を浴び、計画を大きく上回る見込みだそうです。

最近では、「チルい」や「エモい」などが若者を中心に流行っており、そこも相まってか25年をかけて大胆な進化を遂げたチェキですが、
当初の販売したコンセプトなどの枠に収まらない商品展開をすれば、過去に廃れた商品もまだまだ可能性はあるのかもしれませんね。

北見尚之

今後の回転寿司は「回る」「回らない」がどちらがスタンダードに?!

こんにちわ。北見尚之です。

1月に起きた迷惑事件が発生した、回転寿司大手の「スシロー」が事件以降、寿司をレーンで回すことを中止しています。

もともと夏に復活させる予定だったというが、9月末時点でまだ復活しておらず、
さらに、最近は大型モニターで回転レーンを再現する「デジロー」を試験導入しました。
回転レーンを流れる寿司を眺めるのは、回転寿司における醍醐味とも言えますが、
中止を続けさらに大きな方向転換となったデジローの背景には事件の影響は大きかったのが伺えます。

一方、商品を従来の回転レーンで提供し続けているのが「くら寿司」で、
競合との差別化の一環として、今後も継続する方針を掲げています。
「スシロー」と「くら寿司」は、両社ともロードサイドの大型店を基本としていますが、なぜ異なる方針をとっているのか。

「スシロー」の1月に起きた迷惑動画の拡散事件をいまだに鮮烈に覚えている方も多いでしょう。
動画の拡散直後はスシローの一部店舗で客足が遠のき、運営元の株価が急落するなどの影響もありました。

迷惑事件は「スシロー」だけでなく業界全体に影響を与え、注文品以外でレーンに流す商品を大幅に減らしたチェーン店や、
レーン自体を廃止するチェーン店もありました。
一方、「くら寿司」は回転レーンを従来通りに継続する方針を掲げ、
迷惑行為に対しては全店舗に配置した「新AIカメラシステム」で対処するとしています。

両社が異なる方針を立てた理由は、それぞれの特徴を比較すると分かりやすい浮かび上がります。
まずはメニューの違いですが、「スシロー」の郊外店では握りが税込120円・180円・360円と3段階に分かれています。
まぐろ・サーモンなどの定番系は120円で、サイドメニューにはうどん類や茶わん蒸しといった和風の商品があり、デザート類もいくつかそろっています。

一方で、「くら寿司」は定番系の握りが税込115円~となっており、スシローより低価格で、
熟成漬けまぐろやサーモンは115円、はまちは120円、真たこやあじも180円と200円を切っています。
サイドメニューは「スシロー」よりも多く、うどん・ラーメンなど麺類の他、フライドポテトやフライドチキンなどジャンキーなものも揃えています。
その上で、パフェやアイス、ケーキなどのデザート類も「スシロー」より充実していて特に子どもが好きそうな商品が目立ちます。

こうしたメニュー構成から握りを中心に据えた「スシロー」と、寿司も提供するファミレスのような「くら寿司」といった違いが浮かんできます。
ネットやSNSでも「寿司ネタならスシロー」「子どもと一緒に行くならくら寿司が良い」といった意見が見られます。

メニュー以外の違いでは、「くら寿司」は5皿ごとに1回、景品が当たるカプセル自動販売機のような「ビッくらポン!」を導入しており、
20年には『鬼滅の刃』とのコラボがヒットし業績も伸びました。
浅草店・押上店といったインバウンドや観光客も訪問する店舗では、ゲームや凝った店舗デザインが目立ち、
こうした「遊び」の要素が見られる点が独自といえるでしょう。

総括すると、「スシロー」は純粋に寿司を食べたい客層をメインで狙っている一方、「くら寿司」はエンターテイメント性で集客を図っていることが分かります。
くら寿司」がレーンでの商品提供を継続するのも、エンターテイメント性を重視していることが背景にあるのでしょう。
対する「スシロー」は、9月から3店舗で「デジロー」の試験導入を始めており、回転レーンのデジタル化を図っています。
デジローは、テーブル席に設置した大きなデジタルサイネージを活用したサービスで、画面上に寿司のイラストが流れてきます。
画面上のイラストをタッチすると注文でき、注文した商品が提供される仕組みです。
一定金額ごとにゲームもでき、ある程度のエンターテイメント性を兼ね備えているようです。

「スシロー」はデジローの試験導入の他に、既に展開している「オートウェイター」も拡大させるようで、
オートウェイターは、タッチパネルで注文した商品が専用のレーンで運ばれてくるシステムで、通常とは異なるレーンが配置されています。
デジローとオートウェイターの効果が確認されれば、今後スシローで従来の回転レーンが完全に廃止されるかもしれません。

回転レーンを流れる寿司には、宣伝とエンターテイメント性の効果がありますが一方では、
高精彩な寿司を表示できるタッチパネルが普及したことで、回転レーンの宣伝効果は薄まったとも言われています。
実際に入店してから、回転レーンを見ずにタッチパネルで選ぶ人も多いでしょう。

握りの品質を重視する「スシロー」は、レーンの在り方を変えてデジタル化でも良いという考えで、
一方の「くら寿司」は、子どもや若年層を対象とした施策が多く、エンターテイメント性を重視して従来の回転レーンを残しました。

デジタル回転寿司と、従来型の回転寿司のように業界内で多様化が進むのはとてもいいことだと思いますが、
回転寿司は元々ロードサイドに構える大型店を基本としていますが、都市部への出店を強化する中で、
どちらが都市部で受けるのかが今後の業界の行く末にも大きく関わってきそうですね。

私、個人の意見としては回転寿司で寿司が回ってなくてもいいと思っているので、デジタル回転寿司に一票といったところですかね。

北見尚之