歩きスマホの過失はどこまで取られるか

こんにちわ。北見尚之です。

歩きながらスマホを操作する「歩きスマホ」に対する世間の目は厳しいもので、主要箇所のポスターや鉄道の駅構内では放送でも歩きスマホをやめるように促しています。
こうした歩きスマホを危険視する傾向が強まったのは、ポケモンGOなどの位置情報に基づいてプレイするゲームやアプリも要因となっています。

ネット上では、歩きスマホをしていた側を加害者と位置付けた議論が行われています。
まず傷害罪であることに異論はないようだが、そこからどうやって通常の接触事故と区別するかで意見が割れていて、1つはスマホの操作を自動車運転のように業務上の罪を考える意見があります。
「業務上過失致死罪だと思われます。本罪にいう『業務』は、社会生活上の地位に基づき反復継続して行う行為であって、生命身体に危険を生じ得るものをいう」
これに対して、自動車の運転は免許制だがスマホの操作に免許はない。免許に規定された行為を行っているかどうかが「業務上」のラインと考え、歩きスマホの場合は「過失傷害」までだとする意見もあります。
「ケガをさせたという点で傷害罪を成立させる要素はある。また本来、人の多い場所では周りに気を配るべきであり、他人とぶつかる危険性を知りながら歩きスマホをしているということは過失というべき。
よって説明が荒いですが、適用される可能性としては過失傷害罪だと考えます。勿論過失の程度が高ければ重過失傷害となり、相手が死亡すれば致死罪へとエスカレートするものだと考えます。」

法律上においては、過失は故意ではないことから量刑を減ずる効果を持つが民事では、故意の有無ではなく過失割合によって賠償額が決定されることが多い。
したがって、接触事故が過失傷害罪として故意による傷害罪よりも罪が軽いとしても、民事では無過失の事故よりも多くの賠償金を課せられる可能性はある。

では、歩きスマホと自転車のような歩行者以外の接触事故の場合はどうなるのか。
通常であれば歩行者は自転車や自動車に対して、交通弱者として事故の落ち度を低めに見られます。
ここに歩行者側の歩きスマホという要素が加わると過失割合はどうなるのだろうか。この点について弁護士の見解では、
「まず自転車は車道通行が原則ですが、実際には歩道通行可能な場合がかなり広く認められています。歩道を通行していたからといってそれだけで自転車運転者に過失がある。
反対に歩行者に過失がないとはいえない。過失割合は、具体的な事故の状況によりケースバイケースとしかいえないが、通常であれば歩行者の過失が少なくなるところが、スマホ操作で前を見ていなかった事象は
歩行者側の過失を基礎づける事情とはなる。歩行者が負傷していれば刑事面でも過失致傷罪の適用となるが、やはりスマホ操作していた歩行者の過失は考慮され、負傷が軽ければ起訴猶予となる可能性も高いでしょう。
歩きスマホをしていた歩行者が加害者の場合も被害者の場合も、結局それなりの過失を認定されるのは間違いないと思う」

整理すると、歩きスマホの歩行者が被害者となった場合は通常起訴されるような罪であっても、歩きスマホという過失を考慮して起訴猶予に終わってしまう可能性が高くなり、
逆に加害者になった場合は通常の接触事故よりも過失分だけ、多くの賠償金を支払わねばならなくなるケースもあることになる。
こうしてみると歩行者だから法律で守られているという過信はとても危険なことであることがわかる。

自身も歩きスマホはついついやってしまい、ヒヤっとした経験は何度もあるそれでもやってしまうのは、やはり他人事のように軽視していて痛い目に合わないと本質的には治らないものなかの。。。

北見尚之