ファミコンは制作者が限界に挑んだ素晴らしいもの

こんにちわ。北見尚之です。

年々家庭用ゲーム機のクオリティ向上に伴いソフトの容量は増加の一途をたどっています。
もはや1本で30GBを超えるようなソフトも当たり前の近年で昨年は約100.GBのソフトもありました。

これに対して、昔に一世を風靡したファミコンソフトの容量は微々たるものです。
全世界で大ヒットした「スーパーマリオブラザーズ」はたった「40KB」だったそうです。現在のスマホで撮影した写真が数MBあることと比較すると驚きの低容量です。
大ヒットRPGの「ドラゴンクエスト」ですら、初代がわずか64KB。二代目が128KB、三代目が256KB、ファミコンでのラスト作の四代目ですら512KBしかありません。

いま考えると「圧倒的に少ない容量」と「粗雑なグラフィックと音」ですが、当時のゲームクリエイターたちの工夫と、徹底した「データのカット」で厳選した内容を詰め込みました。
ドラゴンクエストが登場する前、パソコンではすでにRPGが楽しまれていたが、それをファミコンで再現するのは不可能と言われていました。
それをどう実現できたのか、、、まずキャラに横や後ろを向かせると、その分の容量が使われてしまうので、常に前を向いています。
さらに使う文字を制限しカタカナはたったの「20文字」に抑えました。
その方法は、最初に呪文やモンスターへ自由に名前をつけて、そこで使っているカタカナを洗い出し頻度の高い方から20番目までの文字を選びそこに無い文字は別の文字に変更しました。

最終的に使えたのは「イ・カ・キ・コ・シ・ス・タ・ト・ヘ・ホ・マ・ミ・ム・メ・ラ・リ・ル・レ・ロ・ン」の20文字だけ。
これに「゛」(濁点)と「―」(音引き)の組み合わせを入れ、さらにひらがなと似た「ヘ」や「リ」などをひらがなと共通にすることでさらに文字数を削りました。

ドラクエ1の文字「ひらがなの間にスペースを空け、読点は使わない」
そうなるとひらがなが多くなるので、「ひらがなの間にスペースを空け、読点は使わない」という独特の文章ルールと限られた文字数でセリフであの節が生まれました。

ダンジョンの下へ行くごとに、同じ曲のテンポと音程を下げて恐怖感を演出
さらに音楽は、ダンジョンでは同じ曲でも臨場感を出すため、下の階へ降りるごとに音程が下がり、テンポもゆっくりにしました。
同じ曲のテンポと音程を下げてすことでかえって洞窟としての恐怖感を増すことに成功しました。

ドラゴンクエスト2」では容量が2倍になったもののたった128KBしかなく、それでいてフィールドが格段に広くなり3人パーティへと進化し壮絶な容量節約が徹底されました。
さらに、容量削減でアイテムがカットされ、本来カラッポの宝箱にはアイテムが入っていたそうです。
ドラゴンクエスト3」では、無音で真っ黒な、あまりにシンプルなオープニングで始まりますが、そこには本来アニメーションシーンが入れられるはずだったのです。
海外版では収録されている、その幻のオープニングですがドラクエというよりも、別のアクションゲームのような感覚です。

ファミコンの同時発音数は3までしかなく、同時発音数の少ないファミコンでは音の厚みがなくなりがちです。
そこで例えばサブメロディパートを使って、32分音符単位で素早く音階を変えて鳴らすと不思議と、1音でドとミとソの和音感が生まれました。
この手法は戦闘シーンやダンジョンで用いられ重厚な音のハーモニーが実現しました。

また、ファミコンと言えばもう1つの国民的ゲームでマリオシリーズも忘れてはいけません。
その中でも大人気のスーパーマリオブラザーズの容量はなんと40KBしかなく相当な節約を強いられています。
例えばクリボーは2足歩行で歩いているように見えます。実はこれ1つの画像から出来ています。
アニメーションをさせるには最低でも2つは必要ですが左右を交互に反転させることで歩いているように見せています。
歩きを自然に見せるため、クリボーの体は少し斜めになっているとか。

さらにキノコやフラワー、スターなどは容量を節約するために片方の半分しか描かず、それを反転させて表示していているそうです。
またノコノコに羽だけ生やして、新キャラ「パタパタ」を作ったり背景の雲と草は実は同じ形で色だけを変えて別モノに見せる。
音はエンディング曲もBメロをカットしてAメロの繰り返しで構成したりと、その節制ぶり涙ぐましい努力の結晶です。

難しいゲームも多かったファミコンですがそれも容量が足りないため、やむなく「激ムズ」になっていたようです。
容量が少なく、多くのステージを用意できなかったので、難しくしなければすぐにクリアされてしまうためやむなく高難易度になっていたようです。

あっちを作り込めばこっちが立たずという状況で、「容量」と「締切り」と「やりたいこと」が錯綜する中で最善のアイデアとバランスで名作が生まれました。
そう考えると今の私達はあきらめる前にほんの少しの工夫や頭をふりしぼることで乗り越えられる局面があるはずです。
そんな昔のゲームは今となって尊敬に値しますね。。。

北見尚之