生活インフラの基本料免除が全国に広がりつつある。

こんにちわ。北見尚之です。

コロナやウクライナ問題で先行きの見通せない経済情勢と物価の上昇が家計を逼迫させる中で、
一部の地方自治体では、国に先んじて家計支援に乗り出すところも出始めているようです。

大阪市では、コロナ禍や物価の高騰で影響を受けている市民生活を支援するため、
22年8月分から10月分までの上下水道料金の基本料金を免除するとのことで、
今回の免除は申請不要で大阪市に住居を構えていれば一律で対象となります。

具体的には、1ヵ月あたり水道基本料1540円の3ヶ月分で、計4620円分が現金で支給するのとほぼ同じ効果になります。
この家計支援策は大阪市のWebページで発表されていた内容ではあったが、広く知られてはいなかったため、
SNS上では、8月分の検針結果があまりにも安いことで、初めて水道基本料金の免除を知った人も少なくなかった。

それほど水を多く使わない単身世帯で、該当期間の使用水量が例えば5立方メートルであった場合、水道料金は55円程度になるそうです。
上水道と下水道の利用バランスにもよるが、10立方メートルまではおおむね1立方メートルあたり11円程度の安価な利用金額で当面は水道が利用できます。

ただ割合だけでみると、単身世帯が9割ほど水道料金を免除されるにもかかわらず、家族世帯は4割ほどの免除に留まっている点で不平等にも思えが、
今回免除の対象となった「基本料金」とは、水道施設の維持管理のために使用水量にかかわらず利用者が負担する性質のもので、
単身世帯はその基本利用金を平時は1人で負担している反面、家族世帯は基本料金を住んでる人数で分け合っていることになります。

さらに、水道の従量課金部分に減免措置を加えてしまうと、水道をよく使う世帯の減免効果が最大化されてしまい、
もしかすると、わざと大量の水を利用するといったモラルハザード的な利用者が出現する可能性もあります。

よって、基本料金に絞った給付は平時に基本料金を多くの割合で支払っており、特に生活に困窮していて使用水量を絞らざるを得ない世帯への
実質的な給付効果が最大化され効率的な支援策になります。

公共料金のような支出を減免することで実質的に給付を行う手法は、これまで国が行なってきた現金やクーポンの支給と比較しても効率的です。
昨年末には18歳以下を対象とした10万円相当の給付について、5万円の現金給付を行ったのちに5万円相当のクーポンを支給するための事務経費が、
1200億円の見積となったことが問題になりました。
全国1741の自治体の中でクーポン支給を選択したのは7自治体しかなかったが、
それでも現金を振り込むだけで数百億円もの事務経費がかかったことには変わりはありません。

水道は、公衆衛生向上のための重要なインフラの1つでもあり、コロナ禍の中で入浴や手洗い、うがいといった感染予防のために
必要不可欠で、地方自治体が水道というインフラの基本料金に着目して減免施策を行うことは家計支援と併せてとても効率的な施策です。

大阪市の発表などを受けて、水道の基本料金の免除を行う自治体がじわじわと増えているようで、7月には兵庫県丹羽市が9月~12月にかけての
水道料金の基本料金(下水道除く)を免除することを発表しました。

8月には兵庫県赤穂市も9月~12月の水道基本料金(下水道除く)を免除することを発表し他にも、
今年だけで札幌市、山口県下関市奈良県王寺市、岐阜県笠松町、栃木県宇都宮市茨城県古河市、埼玉県和光市など、
さまざまな地方自治体が水道基本料金の一律免除の導入を決定し、今後も導入自治体は増加していくものとみられています。

足元では、原油高によって火力発電にかかるコストが増加した結果、電気代の高騰も著しいが、
電力は民営化や自由化の流れによって、顧客構造が地域に根ざした水道と比較してかなり複雑化している現状があります。
そうなると、政府が電力事業者に補助金を付与することで、電気利用者の基本料金を減免するような施策を実施していくことが、
現金の直接給付よりも一層効率的かつ効果的な家計支援策となるでしょう。

現金の直接給付は、不正やミスなどのトラブルなどもニュースなどで見かけますが、
こういった生活インフラに対する施策は効果的に思いどんどん広がっていって欲しいですね。

北見尚之