イオングループが自社パートの時給を7%引き上げ。

こんにちわ。北見尚之です。

とどまることのない値上げラッシュ物価高に対し、イオングループが自社のパート40万人の時給を7%引き上げると発表しました。
今年の春闘では5%が一つのラインといわれている中で、7%という数値は大きなインパクトですね。

日本の非正規雇用者数は2101万人で、卸・小売業に限定すると約47%と非正規雇用者割合が半分近くになります。
卸・小売業で働く非正規雇用者数は推定457万人で、ざくりとした計算だと日本の卸・小売業の非正規雇用者のうち、
およそ6%がイオンのパート従業員となり、その構成比率は大きいものといえます。

イオングループの店舗は皆さんご存じのように全国各地にあります。
小売業はレジ、接客、品出し、バックヤード業務など業務内容も幅広いので人手が必要です。
それだけ大量の人材を雇用してきたのが小売業で、その代表とも言えるのがイオングループです。
イオンは雇用をつくるという点において、日本に大きく貢献している会社ともいます。

従業員数の多さという点でも、イオンのパート時給7%引き上げには非常に大きなインパクトがあります。
しかも、ドラッグストアや金融、デベロッパー、専門店各社で働く全てのパート従業員が対象となり、
これからさまざまな業界に影響を与える可能性は高いです。

実は、イオンに先立ってパート・アルバイトの時給を2割引き上げたのはユニクロを展開するファーストリテイリングです。
その後、イオンやオリエンタルランド(7%増)、任天堂(約10%増)など、大手企業が続々とパートやアルバイトの時給引き上げを発表しました。
当初は、ユニクロだから程度に見ていた企業も、イオンやオリエンタルランドといったように身近で影響力のある企業が続々と賃上げを発表したことで、
いよいよ本格的に賃上げに踏み切る必要に迫られています。

人件費だけが上がり、売り上げや利益が上がらないとしたら企業は人件費倒れになってしまいます。
企業が人件費増に慎重になる最大の理由はここにあります。
では、イオンがこのタイミングでパート時給を7%引き上げようと決断した背景には、
優秀な人材の確保、流出防止をしなければならないという切迫した状況にあります。

イオンの食品レジパート平均時給は1066円で、この時給を7%アップさせると1141円になります。
社会保険料の兼ね合いで年収の壁問題があり、一律に年収が増えるような状況になるかは分かりませんが、
7%アップ後の時給は、特に地方都市の店舗では魅力的に感じられるでしょう。
つまり、同じレジパートの仕事をするならイオンを選ぶという人もでてくる可能性がある時給です。

一方ではイオンの都心店舗ではレジ打ち作業がなくなり始めています。
ルフレジやスマホで決済する無人レジの「レジゴー」導入が進んでいるからです。

これまでレジパート従業員が行ってきた単純なレジ業務などはDX化して、生産性を上げて、
現場での顧客との接点を増やして売り上げ拡大につなげていくというのがイオンの賃上げの狙いです。

これからはパート従業員もそれ相応の働き方に対応し、稼げる人材に変わっていかなければ活躍し続けることが難しくなるという意味で、
従業員にとってのターニングポイントともいえます。

とはいえ、大手が最低でも5%の賃上げを打ち出しているのに対し、世の中の大多数を占める中小企業の賃上げ熱はまだまだ低い状況です。
実際にコロナ融資の返済が始まり資金繰りに苦労する企業や、思うようにコロナ前の業績に戻っていない地方の中小企業が多いのが現実です。

だからといってこのままでは、大企業との賃金格差がさらに広がるだけでなく、
物価上昇ペースを下回ることになり、実質的な賃下げと見られかねません。

企業としては、売り上げを上げるためにも、思い切った賃上げを実施するか、
目標とする数字を達成したら従業員への還元を約束するなどして、人材への投資を本格化させる必要に迫られています。

賃上げが全てではありませんが、いかに人への投資ができるかどうかが魅力的な企業づくりのカギとなりそうです。
人材採用がますます困難となる23年は、会社にとっても従業員にとってもプラスとなるような人的投資を経営者には考えてほしいところです。

北見尚之