こんにちは。北見尚之です。
まもなく発売25周年を迎える「チェキ」ことINSTAX(インスタックス)ですが、撮影したその場で写真がプリントされるインスタント機能が特徴的です。
現在のラインアップには、「アナログカメラ」のみならず、プリント機能とデジタルデータの保存を兼ね備える「ハイブリッドカメラ」に、
スマートフォンで撮影した写真をフレーム付きでプリントできる「スマートフォンプリンター」もあります。
現在、100カ国以上で販売されているチェキですが、若年層を中心にグローバルで支持を得ています。
売り上げ比率は約9割が海外で、残りの約1割が国内となり、カメラ付き携帯電話やデジカメの普及により一時は売り上げが低迷するも、
2012年にブームが再来し、2022年には過去最高の売上高を記録しました。
チェキは、1998年から発売され、誕生の背景には「写ルンです」と「プリクラ」の存在があるとのこと。
1986年に発売された、「写ルンです」は簡単に操作できるシンプルなインスタントカメラで持ち歩きやすい軽さもあり、
1990年代に爆発的にヒットし、そして同時期にブームとなった「プリクラ」はその場でイベント的に楽しめる、
“即時エンタメ”の要素がウケてヒットにつながりました。
この2つの特徴を掛け合わせ、簡単・シンプル・ポータブル・即時エンタメの要素を持つ製品としてチェキが誕生しました。
すると、狙いどおり若年層の女性を中心に大ヒットし、2000年ごろに最初のブームが到来し5年目で販売台数100万台を達成しました。
しかし、1999年に登場したカメラ付き携帯と2000年代から普及し始めたデジタルカメラの影響により、
需要が下がり始め、2000年代のチェキの売り上げは下降し、ブームの後に低迷期が訪れます。
そこから売り上げが再度上昇したのは、2007年を過ぎたころで、2007年に放映された韓国の恋愛ドラマにチェキが登場し、
若年層女性の間で話題になり、それがきっかけで売り上げが上昇したようです。
当時の若年層はチェキを知らない世代で、ドラマを見て「何これ?」という反応になりスマホ撮影があたり前の世代からすると、
それとは異なる写真のエンタメのツールとしてチェキが面白いと感じたようです。
この出来事を機に、韓国を中心にグローバルでチェキの人気が再加熱し始め、この流れを汲んでチェキはアプローチを方向転換しました。
それ以前は、インスタント技術を備えたカメラとして技術面を押し出していたが、丸みを帯びた本体にパステルカラーを施し、
世界で一番カワイイ、インスタントカメラとして2012年に売り出し、チェキブームが再来しました。
スマホで撮影して画面で見ることが標準になった昨今に、なぜあえてチェキで撮影するのか。
そこにはチェキ独自の世界観がある、チェキの写真は「粒子っぽい」「独特の質感がある」など、こういった世界観が好まれているようです。
さらに、プリントすると写真データが記録から作品のようになり、「宝物になる」「もっと身近に感じられる」といった声もあるようです。
その後、チェキはラインアップを拡充し、2014年にはスマホで撮影した写真をチェキのフィルムでプリントできるスマートフォンプリンターを発売。
2017年にはデジタルデータを本体に保存して、プリント前に画像編集・加工ができるアナログとデジタルのハイブリッド機種を発売しました。
かわいいデザインばかりでなく、幅広い層が好むようなスタイリッシュなデザインの機種もそろえ、その結果、ユーザーは女性のミドル・シニア層だけでなく、
男性にも広がり、グローバルで高い支持を得たのがハイブリッドカメラです。
一方で、既存のチェキの愛用者などからは「チェキはアナログだからいい」とう意見もある中で、新製品として発売した「インスタックス パル」は賛否両論を呼んでます。
理由は、同製品は撮影に特化しており、印刷機能を持たないことです。
機能も最小限に抑えられ、撮影した写真はスマホアプリに自動転送、あるいは本体に保存され、プリントする際は別売りのスマホプリンターを購入する必要があります。
なぜ、最大の特徴である「インスタント機能」をなくし、機能を抑えて小型化したのか。
1つ目は、写真撮影のおもしろさを広げたいという発想からで、何枚か撮影した後にスマホで見ることになり、
この時間差によって「写ルンです」のようなワクワク感が味わえることだそうです。
2つ目は、ポータブル性を高めるためで、これまでは本体にフィルムを備えており、
それ以下のサイズにできなかったが、印刷機能を切り離したことで手のひらサイズを実現しました。
消費者インタビューで「チェキを買わない理由」の圧倒的1位が「大きい」で、フィルムを取り除き小型化を追求し、
結果的には、「インスタックス パル」は各所から注目を浴び、計画を大きく上回る見込みだそうです。
最近では、「チルい」や「エモい」などが若者を中心に流行っており、そこも相まってか25年をかけて大胆な進化を遂げたチェキですが、
当初の販売したコンセプトなどの枠に収まらない商品展開をすれば、過去に廃れた商品もまだまだ可能性はあるのかもしれませんね。
北見尚之