今後の回転寿司は「回る」「回らない」がどちらがスタンダードに?!

こんにちわ。北見尚之です。

1月に起きた迷惑事件が発生した、回転寿司大手の「スシロー」が事件以降、寿司をレーンで回すことを中止しています。

もともと夏に復活させる予定だったというが、9月末時点でまだ復活しておらず、
さらに、最近は大型モニターで回転レーンを再現する「デジロー」を試験導入しました。
回転レーンを流れる寿司を眺めるのは、回転寿司における醍醐味とも言えますが、
中止を続けさらに大きな方向転換となったデジローの背景には事件の影響は大きかったのが伺えます。

一方、商品を従来の回転レーンで提供し続けているのが「くら寿司」で、
競合との差別化の一環として、今後も継続する方針を掲げています。
「スシロー」と「くら寿司」は、両社ともロードサイドの大型店を基本としていますが、なぜ異なる方針をとっているのか。

「スシロー」の1月に起きた迷惑動画の拡散事件をいまだに鮮烈に覚えている方も多いでしょう。
動画の拡散直後はスシローの一部店舗で客足が遠のき、運営元の株価が急落するなどの影響もありました。

迷惑事件は「スシロー」だけでなく業界全体に影響を与え、注文品以外でレーンに流す商品を大幅に減らしたチェーン店や、
レーン自体を廃止するチェーン店もありました。
一方、「くら寿司」は回転レーンを従来通りに継続する方針を掲げ、
迷惑行為に対しては全店舗に配置した「新AIカメラシステム」で対処するとしています。

両社が異なる方針を立てた理由は、それぞれの特徴を比較すると分かりやすい浮かび上がります。
まずはメニューの違いですが、「スシロー」の郊外店では握りが税込120円・180円・360円と3段階に分かれています。
まぐろ・サーモンなどの定番系は120円で、サイドメニューにはうどん類や茶わん蒸しといった和風の商品があり、デザート類もいくつかそろっています。

一方で、「くら寿司」は定番系の握りが税込115円~となっており、スシローより低価格で、
熟成漬けまぐろやサーモンは115円、はまちは120円、真たこやあじも180円と200円を切っています。
サイドメニューは「スシロー」よりも多く、うどん・ラーメンなど麺類の他、フライドポテトやフライドチキンなどジャンキーなものも揃えています。
その上で、パフェやアイス、ケーキなどのデザート類も「スシロー」より充実していて特に子どもが好きそうな商品が目立ちます。

こうしたメニュー構成から握りを中心に据えた「スシロー」と、寿司も提供するファミレスのような「くら寿司」といった違いが浮かんできます。
ネットやSNSでも「寿司ネタならスシロー」「子どもと一緒に行くならくら寿司が良い」といった意見が見られます。

メニュー以外の違いでは、「くら寿司」は5皿ごとに1回、景品が当たるカプセル自動販売機のような「ビッくらポン!」を導入しており、
20年には『鬼滅の刃』とのコラボがヒットし業績も伸びました。
浅草店・押上店といったインバウンドや観光客も訪問する店舗では、ゲームや凝った店舗デザインが目立ち、
こうした「遊び」の要素が見られる点が独自といえるでしょう。

総括すると、「スシロー」は純粋に寿司を食べたい客層をメインで狙っている一方、「くら寿司」はエンターテイメント性で集客を図っていることが分かります。
くら寿司」がレーンでの商品提供を継続するのも、エンターテイメント性を重視していることが背景にあるのでしょう。
対する「スシロー」は、9月から3店舗で「デジロー」の試験導入を始めており、回転レーンのデジタル化を図っています。
デジローは、テーブル席に設置した大きなデジタルサイネージを活用したサービスで、画面上に寿司のイラストが流れてきます。
画面上のイラストをタッチすると注文でき、注文した商品が提供される仕組みです。
一定金額ごとにゲームもでき、ある程度のエンターテイメント性を兼ね備えているようです。

「スシロー」はデジローの試験導入の他に、既に展開している「オートウェイター」も拡大させるようで、
オートウェイターは、タッチパネルで注文した商品が専用のレーンで運ばれてくるシステムで、通常とは異なるレーンが配置されています。
デジローとオートウェイターの効果が確認されれば、今後スシローで従来の回転レーンが完全に廃止されるかもしれません。

回転レーンを流れる寿司には、宣伝とエンターテイメント性の効果がありますが一方では、
高精彩な寿司を表示できるタッチパネルが普及したことで、回転レーンの宣伝効果は薄まったとも言われています。
実際に入店してから、回転レーンを見ずにタッチパネルで選ぶ人も多いでしょう。

握りの品質を重視する「スシロー」は、レーンの在り方を変えてデジタル化でも良いという考えで、
一方の「くら寿司」は、子どもや若年層を対象とした施策が多く、エンターテイメント性を重視して従来の回転レーンを残しました。

デジタル回転寿司と、従来型の回転寿司のように業界内で多様化が進むのはとてもいいことだと思いますが、
回転寿司は元々ロードサイドに構える大型店を基本としていますが、都市部への出店を強化する中で、
どちらが都市部で受けるのかが今後の業界の行く末にも大きく関わってきそうですね。

私、個人の意見としては回転寿司で寿司が回ってなくてもいいと思っているので、デジタル回転寿司に一票といったところですかね。

北見尚之