定食チェーンの今後のカギは「男性客」?!

こんにちわ。北見尚之です。

数ある外食チェーンの中で、定食チェーンといえば「大戸屋」と「やよい軒」が浮かぶ人も多いでしょう。

両チェーンとも定食メニューをベースとしており、店舗形態も似たような印象がありますが、
出店地域やFC比率など、意外な違いがあります。
大戸屋は、経営難に陥りコロワイド傘下に入り持ち直しつつあり攻勢をかけようとしています。
対するやよい軒も新たな方針を模索中で方針の違いは今後の命運を分けるかもしれません。

22年度末における国内店舗数は大戸屋が311店舗、やよい軒が364店舗です。
両チェーンとも定食メニューをメインとしており、おかずにご飯と汁物、小鉢類という構成は同じです。
一方、やよい軒がセントラルキッチン方式を導入しているのに対し、大戸屋は店内調理を基本としています。
そのため、料理の手作り感では大戸屋が一歩リードしており、
定食メニューの主な価格帯はやよい軒の750~1100円に対し、大戸屋は900~1200円と後者の方が150円前後高めです。

価格が高めの分、手作り感のある料理を楽しめるのが大戸屋だが、多く食べたい人や男性客はやよい軒を好むかもしれません。
何といってもやよい軒の特徴はご飯のおかわりが自由である点で、量を求めてやよい軒を選ぶ人も多いことでしょう。
だしや漬物のサービスもあるため、だし茶漬けによる味変も可能ですが、
対する大戸屋には、ご飯のおかわりサービスが基本的になく追加料金を支払う必要があります。

出店地域では、国内で約300店舗を展開する大戸屋だが、そのうち約190店舗が関東にあります。
次いで東海地域に27店舗を展開し、関西などその他の地域は数店舗から十数店舗しかありません。
一方で、国内に約360店舗を展開するやよい軒は、現状東京が56店舗、
大阪49店舗、福岡34店舗と全国的に展開しており隣接する県にも十数店舗を出店しています。

この点からすると、全国的な知名度でいえばやよい軒の方が高いかもしれません。
これは池袋をルーツとする大戸屋と、九州地盤のやよい軒の違いが現れた形といえるかもしれません。
ちなみにFC比率を比較すると、大戸屋が50%弱に対しやよい軒は約25%です。

大戸屋といえば経営難になった印象も強く、19年3月期・20年3月期と相次ぐ値上げで実際に客足が遠のき、
21年3月期には債務超過にも陥り、そこを飲食大手のコロワイドが買収し20年からグループの傘下としてさまざまな施策を行っています。
特に30~40代男性からなる「離脱者層」の呼び戻しを急務としており、
これまで大戸屋は女性がターゲットの定食を強みとしていたが、ハンバーグやプルコギなど男性向けのメニューを随時投入しています。

対するやよい軒は、運営会社が非上場化したため情報は少ないものの、プレスリリースなどから追っていくと、
大戸屋と同じく男性向けメニューの充実化を進めているようです。
肉や唐揚げに関するキャンペーンが多く、12月から提供している「野菜とラムのジンギスカン定食」も、
メニュー名に「野菜」とありつつ肉がメインで、やよい軒は今後公共施設への展開を強化するかもしれません。

両チェーンともコロナ禍でテレワークの導入や消費者の外出自粛といった打撃を受けているが、
その後、両者とも業績は回復しつつあり、コロワイド傘下に入った大戸屋は、
「男性向けメニューの充実化」「新業態店の展開」「飲食事業以外への進出」の3方針で巻き返しを図っています。

対するやよい軒も男性向けメニューの充実化という点では共通し、
外食チェーンでは、過去に女性向けメニューを強化しようとして利益が圧迫されてしまった経緯もあります。
そのため、リーズナブルな商品を売りにする外食チェーンにとって男性向けの強化は避けられない戦略と考えられます。

また、出店戦略では大戸屋が商業施設を狙っているのに対し、やよい軒は初の病院内出店を決めました。
双方ともに、ポテンシャルは未知数だが病院内店舗が成功すれば公共機関への出店を強化するでしょう。

両者とも「男性向けメニューの充実化」という共通点はあるものの、
出店戦略に違いが現れることになりましたが、今後この戦略が両社の明暗を分けることになるかもしれませんね。

北見尚之