部下が成果を出しやすくするための「適材適所」とは?

こんにちわ。北見尚之です。

リモートワークが普及した現在では、頑張っているのに成果が出ない部下の教育で悩んでいるマネージャーが増えているようです。
本来、部下の成果が出ないのはマネージャーの責任で、成果を出しやすくするための最大の秘訣は「成果が出やすい適材適所」を実現することです。

その適材適所とは何なのか?
「Can(スキル・経験・知識)」と、「Must(会社からの期待値)」のマッチが分かりやすく挙げられますが、
昨今ではそれに加え「Want(個人が何をしたいのか)」や、それらを自発的に前に進める環境作りの重要性が認識されるようになりました。

モチベーションには「外的動機付け」と呼ばれるものと「内的動機付け」と呼ばれるものがあります。
分かりやすく例えると、前者は「お金」、後者は「意義」や「やりがい」といったものです。
CanとMustの等価交換は「外的動機付け」に近く、Wantが重なる部分が「内的動機付け」に近くなります。

技術の進歩に伴い、単純労働は機械学習やロボティックスが代替するようになりました。
人間はそれ以外の「創造性」などの付加価値を求められるようになっています。
単純労働と「外的動機付け」は相性が良い一方で、創造性を求める仕事においては「内的動機付け」が必要で、
ときには「外的動機付け」が創造性を阻害するという研究結果すら出ています。

今の仕事には意味があると感じて、共感してもらうことが重要になってきます。
昨今は、求人を出す際に「なぜ仕事をやるのか」や、企業のミッションなどを打ち出して共感を得る仕組みを作る企業が増えています。
では、「共感があれば高いパフォーマンスを出し続けられるのか」というとそういうわけではありません。
どんなに共感している人だったとしても、3年も4年も毎日同じことをしていると飽きてしまいます。
そこで、共感と同じぐらい大事になってくるのが「最適挑戦」です。

「最適挑戦」は、難しすぎず、簡単すぎないタスクや役割を与えることですが、人間がタスクをこなす上で没頭するには条件があります。
それが、「難しすぎず、簡単すぎない」タスクであるということです。
難しすぎると負担になりすぎて不安になる、一方で簡単すぎると飽きてしまいます。
適切な挑戦ゾーンで、チャレンジングなタスクをこなすことで、毎年できることが増え成長している実感を得ることができます。

この「最適なタスク」の割り振りですが、言うのは簡単ですが大変難易度が高いです。
レベルが高い人材になってくると、「セルフマネジメント」ができて、
自分でタスクを設定して、自分で自分の限界に挑戦しながら成長することができますが、そんな人はまれです。
ほとんどの人は、自分は何ができて、何ができないか、どんなタスクなら成果が出そうで、何なら出なさそうか分かりません。
そこを助けるのがマネジャーや人事の役割になります。

例えばレンガ職人で例えると、「もうレンガは完璧に積める」状態になったときに、「レンガ職人を3人束ねて壁を作る工程を管理する」タスクや、
「壁の形を設計する」タスクなどに興味が出るかもしれません。
そういったやりたいことがあるものの中で「ギリギリ成果が出そう」なものを選んで渡していくことによって、
レンガを積むだけの存在から、より次世代のデザインの建築物を創れるチームになっていく可能性があります。

最適挑戦とは、「少し挑戦的な組織・役割・タスク」のマッチングになり、
社内での移動であれば「異動」、社外への移動であれば「転職」になります。

最後に重要になってくるのが「自律」です。これは、厳密にいうと「自律的に動くルールや仕組み作り」といえます。
カーレースに例えると、共感と最適挑戦がエンジン、成果がゴールだとすると、自律はコースに例えられます。
人間誰しも自由は大事ですが、何もない状態で「なんでもしていい」と言われても困ります。
自由に自分の意志をもって動くには、なにかしら動く上でのコースがあった方が素早くゴールにたどり着けます。

コースを形作るのに必要なのが「行動規範」や「マネジメントシステム」で、それが定着していくと「カルチャー」といえるかもしれません。
日本には400万社の企業が存在し、それぞれが理想とする行動規範があり、それは取り扱っている商材にも大きく関係しています。
例えば、ビルを建設する企業は、ソフトウェアを開発する企業と比べて、構造的に人身事故が起きやすいといえます。
となると、建設会社は「秩序 > 変化」となり、ソフトウェア会社は「変化 > 秩序」となります。
もちろん、「秩序 > 変化」というソフトウェア会社もあるとは思いますが、何を企業にとって理想とするか、という憲法が企業ごとに違ってきます。

そういった憲法が、従業員に「提示」され「浸透」していると、メンバーそれぞれが自分で判断ができるようになります。
そうなることで、マネジャーが逐一判断をくださなくもよくなり、リモート環境で相手の姿が見えなくても成果が上がりやすい組織になります。

行動規範を浸透させるのは、簡単ではなく、一番効果があるのは評価基準に入れることですが、それも容易ではないケースもあります。
しかし、そういった「緊急性は低いが重要性が高い」タスクに取り組まないと、ずっとその場しのぎで走り続ける組織になってしまいます。

また、マネジメントシステムとは、「誰もがあたりまえのように徹底をして成果をあげられる」ようにするような仕組みのことです。
一般的に仕事とは「目標設定」→「進捗管理」→「評価」のサイクルで成り立っていますが、
この各ステップが徹底されていないと、成果を出す上での障害になります。
そこで、各ステップが徹底されるような仕組み化が重要で、マネージャーと部下が一緒になって目標を設定し、
細目に進捗管理をし、最後は一緒に評価をするといったプロセスです。

この「共感」、「最適挑戦」、そして「自律」どれも理想的ではある一方で、実現させそれを維持させたりするのは容易ではありません。
ただ、常に頭の片隅に入れておき、マネージャーもチャレンジすることが重要だと思います。

北見尚之